
2026/7/1
横浜の朝、まだ少し眠たい街を抜けて、二人だけの伊豆ドライブが始まる。 ハンドルを握りながら、「今日はちょっと特別な日になるかもね」なんて、少しだけ照れくさいことを言ってみる。
三島スカイウォークに着くころには、空はすっかり明るくて、吊り橋の向こうに広がる景色がまるで絵みたい。 まだ人も少なくて、風の音と、足元のわずかな揺れだけが静かに響く。
「ちょっと怖いかも」と言いながら袖をつかまれる感じが、なんだか嬉しい。 富士山が顔を出してくれたら、それだけで今日の運勢は大吉確定だ。
次に向かった柿田川公園は、空気そのものが柔らかくて、湧き出す水の青さが静かにきらめいている。 水の音を聞きながら並んで歩いていると、会話は多くなくても、不思議と心が落ち着く。
「こういうところ、好きそうだと思ったんだよね」 そんな一言が、じわっと胸に残る。
お腹が空きすぎないうちに、沼津港へ。 でも今日は“がっつりランチ”じゃない。ここはあくまで“軽くつまむ寄り道”。
深海魚の唐揚げを少しだけ。 生しらすの軍艦を、そっと一貫ずつ。 アジフライを半分こして、「やっぱり沼津のアジは別格だね」なんて言い合う。
お腹いっぱいにはしない。 このあと待っている“本番”のために、余白を残しておく。
山道を越えて、西伊豆・戸田へ。 海が近づいてくると、窓の外の景色が少しずつ深い青に変わっていく。

ゆでたて タカアシガニ
目的地は、「の一食堂」。 店の前に立つと、まず目に入るのは 海とつながった生け簀。 水面の奥で、タカアシガニがゆっくりと動いていて、 「本当にいるんだ…」って思わず笑ってしまう。
やがて運ばれてくるタカアシガニは、 まるで今日の主役が登場したみたいな存在感。 蒸し上がった身は白くて、ほぐすと甘い香りがふわっと広がる。
二人で向かい合って、 「これ、すごくない?」 「写真じゃ伝わらないね」 なんて言いながら、ゆっくり味わう時間が楽しい。
店内は派手じゃない。 むしろ素朴で、港町らしい温かさがある。 木のテーブル、少し年季の入った壁、 そして窓の向こうには、戸田の海が静かに揺れている。
その景色が、会話の合間をやさしく埋めてくれる。
お腹も心も満たされたところで、土肥金山へ向かう海沿いドライブ。 西伊豆の道は、少しワイルドで、少しロマンチック。
土肥金山の坑道の中は、ひんやりとした空気と、昔の時間がそのまま閉じ込められているような静けさ。 砂金採り体験では、真剣な顔で砂をすくう横顔が、ちょっと可笑しくて、ちょっと愛おしい。
「見つかった?」 「たぶん、これ…砂金ってことにしよう」
そんなゆるい会話が、今日の思い出をふわっと柔らかくしてくれる。
外に出ると、空は少しずつ夕方の色に近づいていて、 西伊豆の海が、昼とは違う表情でこちらを見ている。

戻ってきた現実…横浜も悪くない
帰り道の車内は、行きより少し静かで、音楽も少しだけ落ち着いたものに変わる。 窓の外に流れていく街の灯りを眺めながら、 「また来ようね」とか、「次はどこ行こうか」とか、未来の話を自然にしている自分に気づく。
横浜に戻るころには、すっかり夜。 でも、体の奥には、海の匂いと、湧き水の青さと、タカアシガニの味と、 それから、隣にいた人の笑い声が、ちゃんと残っている。
そんな一日。 “ただのドライブ”って言うには、少しもったいないくらいの、いい感じの現実みたいな妄想。
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