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真夏のもうそうデート
鎌倉、極楽寺...

真夏のもうそうデート
鎌倉、極楽寺から稲村ヶ崎へ

2026/7/30

真夏の午後。 極楽寺駅に降り立つと、空気が少し重くて、でもどこか落ち着く。 蝉の声が遠くで続いていて、海の匂いがほんのり混ざる。
君と並んで歩くのに、特別な会話はない。 ただ、同じ方向へ歩いているという事実だけが、妙に心地いい。
 
極楽寺駅──静けさの中で、君との距離が曖昧になる
木造の駅舎は、夏の光にしっかり馴染んでいた。 江ノ電がゆっくり通り過ぎるたび、風が少し揺れる。
「この駅、落ち着くね」 君がそう言う。 その声が、駅の静けさに吸い込まれていく。
肩が触れるほど近くはない。 でも、離れすぎてもいない。 その曖昧さが、今日の空気にちょうどいい。

盛華園──しょうゆベースの冷やし中華が、君との温度を整える
盛華園の扉を開けると、昔ながらの中華屋らしい匂いがふわっと広がる。 派手なメニュー写真は並んでいるけれど、冷やし中華の写真は見当たらない。 それが逆に、期待を静かに高める。
注文した冷やし中華は、しょうゆベースでさっぱり。 余計な飾りはなく、夏の午後にちょうどいい落ち着いた味。
君は麺をすくって一口食べる。 ほんの少しだけ目を細めて、「さっぱりしてるね」と言う。 それだけの言葉なのに、妙に印象に残る。
「そっち、具多いね」 君が淡々と言う。 交換しようとか、半分こしようとか、甘い言葉はない。 ただ、視線が一瞬だけ皿の上で重なる。
それだけで十分だった。 恋人みたいな雰囲気はないのに、 どこか“ふたりだけの温度”がある。

極楽寺を出る江ノ電の写真

極楽寺を出る江ノ電をお見送り

稲村ヶ崎──海風が、君との沈黙を肯定する
海が近づくにつれて風が変わる。 湿気を含んだ風が、少しだけ涼しくなる。
稲村ヶ崎の海岸に着くと、波の音が淡々と続いていた。 砂浜に座ると、君の横顔に夕陽が当たる。
「今日、いい日だね」 その言葉は、特別でも甘くもない。 でも、妙にしっくりくる。
沈黙が続いても気まずくない。 むしろ、その沈黙が今日のハイライトみたいだった。
空がゆっくりオレンジに染まり、 江の島と富士山が影のように浮かび上がる。
その景色を並んで眺める。 手は触れないし、触れようともしない。 でも、同じ景色を見ているという事実だけで十分だった。
波の音、遠くの江ノ電、夏の匂い。 それらが、君との距離を静かに整えてくれる。

夕暮れの江の島と富士山の写真

夕暮れの江の島と富士山 … ただひとり

渋めの妄想は、鎌倉の夏にちょうどいい
極楽寺の静けさ。
盛華園のさっぱり冷やし中華。
稲村ヶ崎の海風。
夕方の富士山と江の島。
どれもが、甘すぎない“君との妄想”にちょうどよかった。
派手なドラマはないけれど、静かに記憶に残る一日。
君と並んで見た海も、夕陽も、 全部ひとりで見た景色に、君を重ねていただけだ。 それでも、悪くない一日だった。

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